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エンガディンの旅その5(7/17 セガンティーニ美術館とシルスマリア)

ハイキングは2日とも意外に疲れたので、サメダン滞在3日目は観光に。
エンガディンに来たら何をさておいてもここに行きたいと思っていたセガンティーニ美術館。
雨が降ったりして山に行けない時に行こうかな、とか思っていたが晴天続きで雨を待ってたら行けなくなる。それに月曜日は休館なので、結局今日しかなかった。
(同様にあまり天気が良くなかったら、カリジェ縁りのグァルダにも行ってみたかったが、晴天続きで3日の日程ではとてもその日がとれなかった。)

今日もサメダン・ポスタからエンガディン・バスに乗るとセガンティーニ美術館の真ん前で下ろしてくれる。
ちょっと時間が早いので、サンモリッツドルフまで歩いて戻って街を見物。エンガディン4日目にして初めてサンモリッツ。なるほど高そうな店が並んでるが、それほど近寄りがたいという感じでもない。といってもまあ開店前なので安心。幸いヨメサンもそれほど執着はなさそうだ。
さてそろそろ時間なので美術館へ。
セガンティーニ美術館、もうちょっと奥まった場所を想像していたのだが、実際はバス通りにすぐ面して建っていた。そしてとても小さい。美術館というよりは、山の礼拝堂程度の大きさしかない。もともと未完の三部作を納めるために作られた施設のようなので、それほどの大きさは必要ないのだろう。
石の階段を登って入り口へ。やってるのかな?と不安になるような扉を開けると小さなロビーがあって受け付けがある。
入場料を払うと、日本語の音声ガイドはないらしいが日本語の入ったガイドブックを只で貸してくれた。
このフロアの奥に最初の展示室。
写真や映像で見たことのある絵がたくさんあります。
「水を飲むエンガディンの娘」、「湖を渡るアヴェ・マリア」(そんな風なタイトルだったはず)、そしておなじみのアルプスの村の風景。
意外だったのは一群の幻想的な作品。ちょっと後のアール・ヌーヴォ風にも思えるようなものも描いていたことを知る。
しかし絵というのは当然ながら、写真や画集で見るのと現物とではかなり違うもの。
セガンティーニの特徴的な点描ならぬ線描のタッチは間近で見るとずいぶんと粗く雑に見える。「湖を渡るアヴェ・マリア」(そんな風なタイトルだったはず)の溶けるような逆光の太陽も、近寄って見ると不連続な同心円の重なり、かなり定規で書いたようなタッチとして見える。もっともこの絵の美しさには、そんな事などどうでも良いのだが。
さあ、それではらせん階段を登って上階へ。
扉を開けると(いや扉は開いていたかな?)、広い円い部屋です。外観から見える石屋根のドームの下、ここがセガンティーニ未完の三部作を納める部屋です。
正面が「存在」、左手が「生成」、右手が「消滅」(または「生まれる」「在る」「去る」とも)。
大きな絵です。特に正面の「存在」がひときわ大きいようです。
この絵そのものを論じるなど自分には無理な話、やめておきましょう。
ただひとつだけ。
この三部作の背景に描かれた山並みは、どれも実際の風景を実に忠実に再現しています。ですから、どの地点から見たのか、といことが完全に特定できると言われています。
たとえば正面の「存在」。
これはシャーフベルク、つまり昨日登ったセガンティーニ・ヒュッテからの眺めです。確かに昨日見た山々がそのままです。サンモリッツ湖とその隣の色の違う小さな湖も忠実に描きこまれています。ベルニナの凸頂、パリュの雪嶺もひとつとして省略されず並んでいます。昨日実景を見てからこの絵を見たことをうれしく思いました。
「生成」の背景はソーリオの村から見たシオラの岩峰群です。ヤマヤなら無理してもピッツ・バディレとピッツ・チェンガロまで入れてしまいそうですが、画家はやはり美的観点で構図を決めたのでしょう。とはいえ、岩峰の癖のあるカタチが実にヤマヤも納得に再現されています。
「消滅」は一面の雪景色ですが、この背景はマロヤの山とのことです。他の二つに比べるとやや特徴の乏しい山姿という気もしますが、この山と雪原を照らす光、弱々しい冬の太陽はまさに冬山の夕暮れ・夜明けで見た光です。
さてこの三部作は「未完」です。シャーフベルクで「存在」を描いている途中にセガンティーニは倒れこの世を去りました。言われなければ僕などにはわからないのですが、たしかに「消滅」の死者の橇を引く馬の描き方などはそういえば実におおざっぱです。
しかしこの円い部屋でこの大きな三枚の絵を眺める時、完成か未完かなどどうでもいいことです。ベンチに腰を下ろしひと時じっくりと眺めて行く人ばかりです。
長くなりました。さあ、次の方に席をゆずりましょうか。

外へ出るとサンモリッツ湖が眼前に広がります。そしてその奥の山はセガンティーニ終焉の地、シャーフベルク。いやシャーフベルクを正面に見晴るかす地に彼を記念するこの建物を建てたのだとか。

この後はシルスマリアに行ってみましょう。でもバスの時間が開いていますから、ちょっと坂道を下りて、サンモリッツ・バートへ。

あれ、バス停はどこだ、と探しているうちにちょっと忙しくなってしまいました。
なんとかバス停を見つけて、シルスマリアへ。

シルスマリアの郵便局前でバスを降ります。
さすがにここはもう町というより「村」。ただ、村の狭い道を歩くだけでは、犬養道子が「私のスイス」で「貴いめぐみのひとしずくのように、大切にしまっておきたい」と書いた魅力はわかりません。この村も今や僕らのような忙しい客が通り過ぎてゆく場所になってしまったということかも。
村の奥にシルス湖が広がっていますが、その前にちょっと遅めの昼食を。村はずれのレストラン「Alpenrose」へ。
さてメニューがドイツ語だけ。おねえさんが英語で説明してくれるものの、こちらの理解力が半分ぐらい。適当にラビオリとCapunsというのを頼んでみます。

出て来たCapunsがこれ。何かの葉っぱで巻いた餃子、という感じ。いまいちヨメサンの気にはそわなかったようで、「ソーセージが食べたかった」とか。。
このレストラン、かなり良いレストランのようで、ビールとサラダと1品づつでSFr88.50、物価が高いなあと感じるスイスでも特に高く感じました。

おねえさんに、マロヤまで歩くとどのくらい?と聞くと「まあ1時間ぐらい」という返事だったので、シルス湖に沿って歩いてみます。(結局今日も歩くのか!?)

きれいな湖です。サンモリッツ湖と違い、人工的な建物などもほとんどありません。
ただ、湖畔の道だから水平、と思うと実は山が迫っているため、高巻き状にけっこうアップダウンのある道、山道です。(それでも自転車がずいぶん通りますが)
途中に小さな牧場小屋のIsolaの村を通りますが、1時間過ぎてもマロヤの村はまだ遠そう。
今日は歩かないつもりだったのに、と後悔しながら歩く事2時間以上。ようやくマロヤの村に到着しました。

マロヤの村もセガンティーニが暮らしていたところ、いろいろ物語のあるところなのでしょうが、今日はもう疲れました。お馴染みエンガディン・バスでサメダンに戻ります。

ちなみにエンガディン・バス、外装も内装もこのデザイン。

今宵がホテル・ドナーツでの最後の夕食。今日はワインも1本(エンガディンのピノ・ノワールでした)頼んで美味しく頂きました。写真はデザートだけですが。

明日はソーリオの村に移動します。


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