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エンガディンの旅その6(7/18 ソーリオへ)

さて、今日は慣れ親しんだサメダンを後に、ブレガリア峡谷の村ソーリオSoglioへ。
チェックアウトを済ませ、荷物を引きずってサメダン・ポスタのバス停へ。そう、今日も快晴、すでにもう太陽が照り付けている。
ソーリオに行くにはキアヴェンナ行きのポストバスでプロモントーニョまで行かなければならないのだが、このポストバスはサンモリッツ・バーンホフ始発。サメダン駅から電車、という手もあるがそれよりは途中までエンガディンバスで行ったほうが歩かずに済む。というわけでまずはお馴染みエンガディンバス、系統2。ただしエンガディン・カードはホテルに返してしまったので、今日はバス代を払う。シルヴァプラーナまでSFr7.80、結構高い。改めて今までカードでずい分得した気分になる。

シルヴァプラーナでポストバスに乗り換え、なのだが小一時間ほど間がある。実際は次のエンガディン・バスでも良かったのだが、まあ来てしまった。でちょっと町を見物。ただ荷物があるので、一人はバス停で荷物の番、交代でうろうろ。
シルヴァプラーナの町、湖のほとりだしCorvatschの玄関口ということもあって、サメダンよりはいくらか観光地っぽい感じか。この町からJulierpass、Cuhrへの道が分かれている。脇を固めているPiz Julierの山容からよほど険しい峠道を想像したが、実際はそうでもないらしい。Julierの名前からはユリウス・カエサルが連想されるが、彼以前からの名前という説も見られた。さてどうなのだろう。

さあバスが来た。スイスではお馴染みの黄色いポストバスだが、この旅では初めて。その前に乗ったのは何時だったか。
ソーリオまでの通しの切符を買ったらSFr33.60、これまた結構高いんだね。
バスはオーバーエンガディンの谷、湖畔の道を走り、昨日来たマロヤ。
マロヤ峠はマロヤの村のすぐ近く。ほとんど標高差もないようだ。ところが峠を越えてブレガリア谷に入ったとたんに奈落に落ちるような急斜面の下りになる。

この写真ではイマイチ伝わらないが、ちょっと見た事がないような急坂をヘアピンカーブの連続で駆け降りて行く。ポストバスは対向車線まで一杯に使って曲がって行くので、カーブの手前ごとに独特の音色のクラクション、まさに角笛を鳴らしながら走っていく。
谷底まで下りると後は谷間の道を走って行く。エンガディンの谷に比べるとぐっと鄙びた感じになる。まばらな家々もグリゾン風のスグラフィティは姿を消し、白壁と石造りの質素な風情に変わる。
ヴィコソプラノ、スタンパとブレガリア峡谷の村をいくつか通り過ぎ、バスは小さな広場になっているプロモントーニョ・ポスタに停車。ソーリオへはここで乗り換えだ。
ソーリオ行きのバスは既に広場で待っていたが、僕らは1本遅らせてここでお昼にしよう。
ちょうどうまい具合に郵便局の隣はホテル、その前庭がレストランになっている。

まずはビール、そしてスパゲティ・ブレガリアとキノコのリゾットを。
ヨメサンのスパゲティはトマトソース、いわゆるポモドーラだろうが、めんは生パスタ風。僕のリゾットが写真のやつ。これが旨かった。味付けが実に日本人にも合うというか何というか。ドナーツの料理もおいしかったが、もっと普通になじめる味。味見したヨメサンも帰ってきてから、これが旨かったと言っとりました。(そのせいか知らないが、帰りにミラノのスーパーでやたら乾燥ポルチーニを買い込んでいた。)
隣のテーブルにはいかにも山登り(ハイキングじゃなくてクライミング)風のグループ。トポなどを眺めたりしている。ふと視線を上の方に向けるとなんと、、、

見えてしまった。ピッツ・バディレ。
この谷底から見えるとは思っていなかったので、不意をつかれた感じになった。随分な角度のところに特徴のある台形の頂きがあった。いや岩の巨人に覗き込まれている感じか。
今回の旅の目的というか、テーマの一つが、ピッツ・バディレを眺めるということだったのだが、あっけなく目的達成してしまった。天気悪かったらダメかも、と思っていたのでここは素直に感激しよう。
ピッツ・バディレ。
アルプス6大北壁の一つ。
ガストン・レビュファの「星と嵐」では必ずしもアルプスの北壁ベスト6、と言っているわけではない。3大北壁はまず異論のないところだろうが、後の3つはレビュファが登った思い出の壁、というところ。困難な北壁、といえばドロワットやグロースフィーシャーホルンの氷だってある。だけど今でもアルプス6大北壁という言い方があるらしい。深田百名山のようなものか。もちろん6大北壁クライマーは百名山ハンターよりはるかに少なかろうが。。
そんなことはいい。昔々ヤングクライマーだった僕の愛読書「星と嵐」。その中でもマイ・フェイバリットはピッツ・バディレだった。がっちりした美しい花崗岩のスラブ。壁全体が一つのスラブで構成される山。だけど壁の中に滝の流れるアイガーや引き出しみたいに岩が抜けるマッターホルンに比べたら、「オレでも修行すれば登れるかも」という気がしていた。でもプロモントーニョへの道筋を調べたりしなかったなあ。。そう、レビュファ一行もプロモントーニョからバディレに向ったのだ。
そしてもう一つ、バディレ北東壁の初登にはリカルド・カシンの名前が刻まれているのだ。

さあ、もうバスが来る頃。ポスタ前に戻ると、ソーリオからバスが下りて来た。日本の人が2人、僕らより若いカップル。こんな所で日本人に会うとさすがに親近感を覚えるが、話しかける時間もなく会釈してすれ違った。
さあいよいよソーリオへ。バスはつづら折りの山道をホルン風のクラクションを鳴らしながらかけ登る。15分ほどでソーリオの村の入り口に到着。
ホテルの場所がよくわからないが、細い石畳の坂道を適当に登って行くと、目指すホテルに突き当たった。
ホテル・パラッツォ・サリス Hotel Palazzo Salis、http://www.palazzosalis.ch/indexi.html
通されたのはこんな部屋だ。

このホテルは17世紀の建物を19世紀にホテルに改装したもので、Historic Hotel of The Yearというのにも選ばれたことがあるらしい。写真で見ると中の人物が似合わないのは別として、結構きれいな部屋に見える。実際の印象はやはり古いなあ、という感じ。石の床や扉などオリジナルをそのままに使用しているのだろう。トイレや洗面所は部屋の外(専用だが)だった。もっとも水回りなどは新しい設備をインストールしていて不具合はなかった。
外は暑かったが、部屋の中はひんやり涼しい。しばし休憩。。
もっとも、外はかなりにぎやか。というのもこのホテルは庭園も有名で、庭のオープンカフェに人がたくさんいるからだ。子供の叫び声も聞こえる。
じゃあ、庭に出てみようか。

緑あふれる庭園のところどころには日光浴用のベッドが置いてあり、「宿泊客専用」となっている。ちょっと座ってみたりしたが、日射しの強さのせいかじっくり日光浴している人は誰もいない。

庭の木々の間からはピッツ・バディレも見えた。ただし、山の眺めはそれほど良くない。
眺めの良い場所を探して外に行ってみる。

この辺りの角度が良く見る写真。教会の塔がソーリオの村のシンボル。背景の山、右端がピッツ・バディレ、隣がピッツ・チェンガロ。
正面がシオラの岩峰群。セガンティーニの三部作の「生」、背景に描かれているのはこの山だ。
エンガディンとはまたまったく山の形が違う。この眺めを見るためにはるばるここまで来たんだな。

新田次郎もこの村を訪れ、信州の山村にも通じる雰囲気を高く評価している。(昔「アルプスの谷アルプスの村」は一度読んだはずだが、ソーリオの章は記憶に残っていない。また読み返してみたい。)
村の建物も未だに簡素な山村の雰囲気を残している。ただし、日中は観光客がずいぶん多い。自分もその一人ではあるのだが、アルプスの静かな村、という思い入れが強すぎるとちょっと違うかもしれない。
村の中には「Soglio Produkte」http://www.soglio-produkte.ch/default.htmlを売っている店もある。天然原料で作った石けんやクリームなどだ。アルプスの村とて現代社会の中で生きている。
もっとも路地のベンチに腰掛けておしゃべりしているおばあちゃん達は何世紀も前からそのまんまという風情ではあったのだが。

ホテルのレストランで夕食。ここもおいしい。イタリアに近付くほど料理はうまくなる、という説があるがやはりそうなんだろうか。(ディナーの途中で席を立って、夕映えで赤く染まったピッツ・バディレの写真を撮りに行ったりしてしまったが)
そして忘れてはいけない。ソーリオはまた「栗の村」でもあるらしい。隣のテーブルのおじさんが食べているのを見て注文。モンブランでは通じず、マロンクリームとか何とか言ってもだめ、隣の人が食べてるあれ、で出てきました。「バーミセリ」というべきだったらしい。マロンクリームの下はスポンジではなくアイスクリーム。これがまた旨かったなあ。
明日はもうアルプスとお別れ。


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